2017年1月24日火曜日

#005 ガンズ・アンド・ローゼズ神戸公演の話

◆はじめに

2017年1月22日(日)、QB METALは神戸ワールド記念ホールで行われたガンズ・アンド・ローゼズ神戸公演に参加した。

本記事では、この公演への参加を決断するまでの経緯と、オープニングアクトとして出演したBABYMETALのパフォーマンスを見た感想を書き記していくこととする。


◆いかにして神戸に行くことになったか

自分が初めてBABYMETALのライブに参戦したのは9/19のRED NIGHT@東京ドームだった。
皆さんにとってのRED NIGHTはどうだっただろうか?盛り上がった人、熱狂した人、感動した人、感涙した人様々だろう。だがどう表現するのであれ最終的にはこの一言に帰結するのではないだろうか。


BABYMETALは最高だった!



では自分にとってはどうだったのか。

確かにあの日のライブは良かった。素晴らしかった。4の歌といらすとやの融合という着想を与える要因とすらなった。しかし、ガンズ・アンド・ローゼズ神戸公演を体験した今だからこそ言えるが、BABYMETALにとってWORLD TOUR 2016の集大成であるRED NIGHTは、自分にとって最高のライブではなかったのだ。

なぜ自分はあの時最高の気分になれなかったのか考えた。無論BABYMETALは自分達の持ちうる最高のパフォーマンスを披露した。彼女たちが原因であろうはずがない。だとしたらその理由は自分にあることは明白だ。では、自分が物足りないと感じたの事は一体何だったのか…



距離だ。



自分が獲得した席は2階席の中段だった。会場に入った時一番に思ったのは「遠いな…」ということだった。あの位置からでは3人は豆粒でしか見ることが出来ない。四方に巨大なスクリーンはあったが、スクリーンでは自分で見たい時に見たいポイント見ることができないし、スクリーンですら小さく感じた。

結局、距離に対する不満足を自分はそのライブで払拭することは出来なかった。
だが、それは自分がもう少し早くライブに行こうと決意し、いい席を取ろうと積極的に動いていたら、違った結果を生んだ可能性は大いにあった。つまり、自分は自らの手で最高のライブにする機会を失っていたのだ。

次回のライブ参戦の時に同じ轍を踏むわけにはいかない。そこに来たのが12月初頭に発表された、ガンズ・アンド・ローゼズのサポートアクトにBABYMETALが出演するという情報であった。
出演するのは、1/21京セラドーム、1/22神戸ワールド記念ホール、1/25横浜アリーナ、1/29さいたまスーパーアリーナの4公演。席は座席指定(SS~A席が)10,000~15,000円、スタンディング(VIP)が30,000円前後。BABYMETALの出演時間が40~60分と想定される中では破格の値段である上、座席指定とスタンディングでは2倍以上の差がある。その他にも越えるべきいくつかの要因が存在していた。当然あきらめるという選択肢が濃厚であった。


だが、ライブに行きたい…!


11月にライブビューイングでつないだものの、2か月の空白期間を経た自分のロスは想像以上だった。諦めきれなかった。ガンズサポートアクト以外の情報も錯綜し、いくつかの決断を迫られる中で、自分をライブへと後押ししたのは一つのシンプルな事実だった。



「遠い」の反対は「近い」




前回は「遠い」場所だったから満足できなかったのだ。ということは、「近く」であれば満足できるということになる。
逆に、自分がBABYMETALを「近く」で見ることが果たして何回出来るのだろうかを考えた。ワンマンをやればスタンディングエリアは争奪戦で当選する保証はない。白ミサは都会の平日で地方組の自分には難しい。海外も仕事のことを考えるとハードルが高い。つまり今回のガンズ公演はBABYMETALを「近く」で見ることのできる他でもないチャンスだ。
理詰めで考えれば考えるほど、答えは絞られていった。いや、そもそも4公演の中から1つを選ぶという条件の下で選択肢など無かったのだ。


こうして自分は、
一番人が少ない前の列を取りやすいであろう「神戸ワールド記念ホール」の
一番近くで見られる「VIPスタンディング」を選択した。


◆自らが手にした最高の瞬間

学生時代の友人達と歓談を楽しみ、三宮のホテルでチェックインを済ませたのは14:30過ぎ、万を持して会場である神戸ワールド記念ホールへと向かうことに。しかし移動中、ホテルにチケットを忘れるという初歩的なミスを犯したことに気付く。結局Twitter上のメイトさんとの交流もできず、開場時間をやや過ぎた16:05ごろ入場することが出来た。


自分の見るエリアは舞台下手側の前方、既に数十人が場所を確保しており、自分は前から5列目くらいに陣取ることになった。最前を取ることが出来なかったので視界がオールクリアというわけにはいかなかったが、それでもRED NIGHTとは雲泥の差。ステージは目と鼻の先で申し分のない「近さ」だった。

自分の前方に陣取っていた人はガンズのグッズを身に付けた人、BABYMETALのグッズを身に付けた人、特にグッズ等を身につけていない人がちょうど1:1:1の割合に映った。予想以上にBABYMETALを前面に押し出している人が多かった、自分の人見知りな性格もあり、周りに声をかけることが出来ず、特に何をするわけでもなく開演までの50分が過ぎていった。ただ、無言でも安心感があった。自分と同じBABYMETALを愛する者が周りにいるというのは心強かった。


やがて照明が消え、大きな歓声が沸き起こった。17:00定刻通りの開演だ。
染谷歩氏のナレーションが終わり、BABYMETAL DEATHのイントロが始まった。

ダカダダカダダン!ダカダダカダダン!


地鳴りのような音が鳴り響き、自分が振動体の一部と化した。それに呼応するかのように最前の面々が「ヘイ!ヘイ!」と声を上げる。
自分も大声を張り上げながら、「これはいける!」と手ごたえを感じた。
そして、タオルをまとった3人が上手から登場。掛け声がますます高まった。
タオルを外した3人が両腕をクロスさせ構えに入った。そして赤色の照明が白く変わった瞬間、


自分の眼前にいたメイトたちが、凄い勢いでズレた。


まるでジェットコースターが急旋回するかのように、電車が急停止するかのように強烈な横Gがかかった。モッシュの発生だ。3人が照らし出されたことにより、最前ではその興奮が強烈な運動エネルギーとして転化していた。

そのモッシュが起きた瞬間、かろうじてその波から逃れた自分はその隙間から肉眼ではっきりと見た。

SU-METALを。

YUIMETALを。

MOAMETALを。




3人の全身を。3人の全身全霊のアクトが始まる、その開始点を。


肉眼ではっきりと見た。見えた。やった。I DID IT!



自分が3人が見えるほど近い位置に存在していた。それは衝撃的な事実だった。これでまた一段と自分は3人の虜となった。そしてこれまで同じよう体験をしてきた皆さんがそんな3人に惹かれ、圧倒されてきたことを理解した。


すぐに3人は戦闘態勢に入った。荒れ狂う大波のような始まりの中、BABYMETALは名乗りを上げた。



B!



自分は叫んだ!これまで出したことのないくらいの大声でBという1文字を叫んだ!



A! B! Y!



叫んだ! 叫んだ! 叫んだ!




M! E! T! A! L!




叫んだ! 叫んだ! 叫んだ!  叫んだ! 叫んだ!




9文字叫びきった!




その時、自分は到った。




そう、俺はこのBABYMETALのライブでこのように大声で叫びたかった!



自分の周りにいるBABYMETALを愛する者たちと共に熱狂したかった!



RED NIGHTでもう一つ物足りないと感じたこと。それは、周りがあまり大声で叫んだり体を動かしたりしていなかったことだ。その日周りがあまりノリがよくないことで気を使ってしまい、BABYMETALを満足にで応援することが自分は出来ていなかった。だからこそ次は仲間と共に大声で叫びたい応援したい。そう思っていた。




だから、




BxAxBxYxMxExTxAxL!




その9文字叫んだとき自分の目指した目的地に到ったことを確信した。そのことで口元がだらしなく緩んだ。何十種類もの快楽物質が生成されたし、脳内麻薬だって出た。

しかし、BABYMETAL DEATH!はその余韻に浸る暇を与えない。


DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!

DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!

DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!

約5分間ノンストップで叫び続けた。1曲目にも拘わらず既に息が上がるほどに体力を消耗した。


2曲目ド・キ・ド・キ☆モーニングが流れた瞬間、大きな歓声が上がった。隣にいた方がおもわず「やった!」と口にしたのが印象的だった。人は予想外の幸運が訪れると感情をあらわにせずにはいられないものだ。

BABYMETALの始まりでもあり、数々の苦楽を共にしてきたこの曲が多くの人に愛されているのを実感した。


3曲目はCatch Me If You Can

京セラドームではあわだまフィーバーだったが今回は奇を衒わずに正統派で来た。

今日の神バンドはLeda神、藤岡神、BOH神、青山神の4人。相変わらず演奏レベルの高さを実感した。藤岡神は地元県だからか気合が入っているように見えた。

最前の熱狂は止まらない。今回はサークル煽りを要求しなかったが、要求していたら出来ていたのではないかと思えるくらいボルテージは高まった。

曲に合わせて自分の首が思わず大きく揺れる。しかし、ここは「近い」場所だと我に返る。3人の姿をもっとこの目で焼きつけておかなければならないことに気付き、必死で3人を視界にとらえようとした。この聴覚と視覚のせめぎ合いはライブの最後まで続いた。


4曲目のメギツネの出だし、いつもより遅く感じた。楽しいことをやっているとあっという間に時間は過ぎるものだが、全身全霊で楽しんでいるにもかかわらず、まだ4曲目なのかという感覚に陥っていた。最高の時間が終わってほしくないと深層心理が駄々をこねているのか、それとも一つでも多くの情報を得ようと無意識のうちに神経を研ぎ澄ませているのか。

相対性理論でさえ説明できないこの不可思議な現象はSU-METALの完璧な歌唱でいつの間にか修正されていった。Crap Your Hands!の掛け声で一斉に手を叩き、1,2,3 Jump!で始まったメイト達の跳躍。ジャンプするタイミングや高さはバラバラだったが心は一つだった。


5曲目KARATE。このメギツネ→KARATEというセットリストの組み方はSU-METALの歌唱力がいかんなく発揮される流れであることに気付いた。その意図を把握しているのだろう、SU-METALは歌いこなす。自分だけでなく皆が魅了されているのを感じた。


KARATEのアウトロから間髪いれずにGIVE MEの声が流れる。6曲目のギミチョコ!!がフィナーレに向けて最強のタイミングで投入された。

ずっきゅん!どっきゅん!とおおよそ成人男性が生涯で口にすることは一度もないであろう単語を叫びながら、やはりギミチョコ!は魔曲だと改めて実感した。曲が流れている間コンマ一秒たりとも静止していることが不可能なこの曲で、ただでさえ高いボルテージが加速度的に上昇していった。

もはやホームであるとかアウェーであるとかそんな事は関係なくなっていた。そこに生み出されたのは熱狂の渦。

渦はBABYMETALが好きかガンズ・アンド・ローゼズが好きかという音楽の嗜好など関係なく全てを飲みこんでしまったのだった。

ふと思った、次にイジメ、ダメ、ゼッタイかRoad of Resistanceが流れれば、もうこの先に待ちうけるのはWall of Deathしかない!自分は覚悟した。

しかし、ギミチョコ!!に存在するはずのないアウトロが流れ始めた。

残念ながら、夢のような時間が終わりを告げる合図だった。しかし、自分にとっては幸運だったのかもしれない。なぜなら体は悲鳴を上げ、息は絶え絶えで、足は疲弊し、少しでも激しい動きをすればつってしまうような状態だったからだ。



We are! 



SU-METALが会場に問いかけた。

自分はその一員として名を連ねることが出来たという喜びを感じながら、応えた。 BABYMETAL DEATHでは1文字ずつだったその9文字が組み合わさり意味を持った。彼女たちの名、そして自分たちの名。その名は。



BABYMETAL!




神戸の地にBABYMETALの名が刻まれた瞬間だった。





ガンズ・アンド・ローゼズ来日公演@神戸ワールド記念ホール

オープニングアクト BABYMETAL セットリスト

1BABYMETAL DEATH
2ド・キ・ド・キ☆モーニング
3Catch me if you can
4メギツネ
5KARATE
6ギミチョコ!!




◆ガンズ・アンド・ローゼズの素晴らしいアクト

See you!


彼女たちに別れを告げ、徐々に熱が収まり徐々に冷静さを取り戻していった。とりあえず水分が足りなかった。会場のすぐ外にある自販機で買ったアクエリアスはあっという間に自分の体内へと吸収された。肩で息をしなくなるまでに20分くらいかかった。



その後ガンズ・アンド・ローゼズのメインアクトが始まった。

仮想セットリストに基づいて何度か聴いただけの自分がこのライブをどのように感じるのは未知数だったので、心配な部分もあったがその心配は杞憂に終わった。

自分が凄いと感じたのはそのタフさだ。2時間半計25曲という長丁場の中で、Axl Roseは何枚もTシャツを買えながら縦横無尽に走り回った。そんな有酸素運動の連続にも拘わらず、彼は疲れを見せることなくハイトーンボイスで歌いきった。

SlashのSpeak Softly Love(God Fatherのテーマ)は圧巻で、皆が固唾を飲んでその演奏を見ていた。人知を超えたものを目撃すると人は絶句するのだということを象徴するシーンだった。

下手側にいた自分はDuff McKaganをパフォーマンスを目にする機会が多かった。Axlから紹介を受けた後披露したNew Rose(The Damnedのカバーがとてもクールだったのがハイライトだ。

Dizzy Reed(key)
Richard Fortus(gt)
Frank Ferrer(dr)
Melissa Reese(key)

全盛期のメンバーではない4人も自分の役割を素晴らしく果たしていた。ガンズ・アンド・ローゼズのメンバーであることに誇りを持ち、アクトを楽しんでいるように見えた。

遅刻魔などと言ったネガティブなイメージは微塵も感じることはなく、レベルの高い音楽集団として今のガンズ・アンド・ローゼズは機能しているように自分には映った。素晴らしかった。

周りのファンの皆さんにも助けられた。当然のことだが、BABYMETALのライブにルールがあるように、ガンズのライブにもルールがある。ルールを知らない自分は、ガンズファンが盛り上がるタイミングで一緒に盛り上がりライブを楽しむことが出来た。本当にありがたかった。

21:00、ガンズ・アンド・ローゼズ神戸公演は幕を閉じた。


◆おわりに

最高のライブだった。突き刺すような寒空の中、三宮のホテルへと戻り、TL思いついたことをそのまま殴り書きした。シャワーを浴びて寝付こうにもなかなか寝付くことが出来なかった。このわが人生で3本の指には確実に入るであろう興奮を、脳が必死で言語化しようとフル回転していたのだ。

なんとか、自分の体験した瞬間を文章にしたい。その意思が自分を今PCの前に向かわせている。


ライブの翌朝、ホテルを後にし車で帰路についた。車内で聴くために持参したBABYMETALのCDをローテーションしながら、日常へと戻るのだ。その冒頭、LIVE AT WEMBLEYの1曲目であるBABYMETAL DEATHのイントロが流れたとき、あの興奮がよみがえってきた。駐車場から車を発進させた自分の口元はあの時と同じように緩んでいた。














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